ある日、ふと思い出した昔の暖かい思い出。 そんな事を小説にしてみたい! そんな男の場所です。


スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


装甲騎兵ボトムズ 外伝
Lullaby of the red shoulder

「真実を知った日」

アストラギウス暦7230年10月17日

その日私は、一人で酒を飲みたくなり、立ち寄ったこともないバーの前で立ち止まった。

いつもなら酒を飲みたい、それも一人でなんて思うことなんて今までに一度もなかった。

だが、その日は別だった。

降りしきる重くボタボタと落ちる雨がそんな気分にさせるのだろうか…
肩まで濡れている今の状況を考えると、雨宿り程度でもいい、何か気を紛らわせる程度でもいい…
安酒でも気分を変えることはできるだろう。

そう決めて、店のドアを開ける。

店の名前を見るまでもなく、中に入る。

中は薄暗く、人気もない…

何より場所が場所だ。人もこないのだろう。

よく見るとカウンターの奥にその店の主人が見え。

「いらっしゃいませ…」

小さい声で主人は言った。大柄な格好に似合わない小声なのが印象的だった。

薄暗いわりにはこぎれいにまとめられた店内の端の椅子に腰をかける。

「ご注文は?」

グラスを拭きながら近づいてきた主人の顔がよく見える。

「あっ…じゃあ何か酒を…マスターのオススメの安い酒を」

「…わかりました」

すると主人が取り出したのは明らかに高そうな酒だった。

「え?ちょ、ちょっと!なんか高そうな酒なんじゃ…できれば安い酒がいいなぁ」

他にも見たことのある安酒はいくつも見えたが、店主は何も言わずにグラスに氷を入れ、酒を注ぎ始め、小声で語り始めた。

「今日は私にとって記念日なんですよ…お勘定はかまいませんので…」

…何か薄気味悪い感じもした、もしかしたらボッタクリなんじゃないのか?

そう疑っていると、目の前に先ほどのグラスが置かれた。

「どうぞ…」

正直飲むのも怖くなってきたが、もしこれがボッタクリ系の店だったら速攻で逃げればいい。

グラスを持ち、一気に飲み込む…

すると、今まで飲んだことのないようなうまさの味だった。

口の中に広がるかすかな甘み、これが熟成された酒のうまみなのだろうか?

「…ぷっはぁ…なんてうまい酒なんだ!」

そのうまさに思わず言葉が出てしまうと、表情がよく見えなかった主人の顔が和らいでいく。

「そうですか…お口に合ってよかった。もしよろしければもう一杯どうですか?」

「是非!」

今度はグラスが二つになり、主人と私の分が注がれた。

一杯目は一気に飲んでしまったので、今度は味わいながらゆっくりと飲むことにしよう。



グラスの酒が1/3くらいにまでなったところで、今まで黙って飲んでいた主人が口を開いた。

「この味を分かる方に飲んでもらってよかった…」

その表情は穏やかで、何かを懐かしむようなようにも見えた。

そして私は先ほどの主人の一言を思い出した。

「先ほど記念日と言っていましたが、何の記念なんですか?」

「いや…なに、昔の話ですよ。昔のね…」

「もしよければ聞かせてくれないかな?こんなうまい酒を飲ませてくれる礼として、私もその記念をお祝いしたい」

「長いお話になります…まぁ酒の肴程度に聞いてください」

「はい」

「…あれは35年も前の話です…」

この時は、主人の恋人か子供の誕生日なのかと思っていた。

だが、後に私はこのアストラギウス歴の中でもっとも過酷な時代の真実を知ることになるとは…

正直想像もしなかった…
スポンサーサイト


この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。