ある日、ふと思い出した昔の暖かい思い出。 そんな事を小説にしてみたい! そんな男の場所です。


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「宇宙(そら)で出会った者」
上を見上げれば、漆黒の闇。

正面を見れば、太陽に照らされた月の白い大地が広がる。

その大地すれすれを、1機のMSが飛行機形態の「ウェブ・ライダー」で飛行していた。

B「…出力上昇中…1100から1200へ。…いいね。すんなりと上がっていく。さすがアナハイムのエンジニアだ。」

テールスタビライザーと脚部のスラスターから、さらに大きな火が上がっていく。月面すれすれを飛びながらも、「ブルー・イーグル」は愛機の調子がいいことで上機嫌だった。

S「順調ですね。どうですか?Zガンダムは?」

B「…いい感じだが、さすがにネモからの乗り換えだと出力がありすぎてとまどうな」

管制室にいたサトウはパイロットスーツからリンクしているブルーの心拍数や脳波などを見てみるが、数値上では至って平常心を保っているのがわかった。

S「そろそろ1週目が終わります。次はフルでお願いします」

B「了解」

アナハイムの管制室の天井は、超強化ガラスが張り巡らされており、上を向けば宇宙が見える。メカニック達も管制室に集まり、自分達が手塩に調整をかけた機体の状況を見に来ていた。

B「まもなく1週目」

ブルーは管制室を目指して飛行を続ける。その表情は何かおもしろいいたずらを考えついた少年のように輝いていた。

管制官「!?ブルー・イーグル!コースがずれている!こちらに向かってるぞ!」

B「…」

管制室の中が少しざわめき始める。

管制官「ブルー・イーグル!こちらにむかっている!コース修正…!!!!」

彼の言葉がいい終わる前に、管制室の天井の上。星空の中をグレイ・ブルーがロールしながら高速で通り過ぎていった。

メカニック達からは歓声が上がる。管制官は肝を冷やしたようで、ブルーに対して注意をしている。

S「ブルーさん、あまり無茶はしないでくださいね。後で報告書書かれるのは私なんですからね」

そう言いながらもサトウは、ブルーがとった行動を喜んでいた。ブルーができる最大限の感謝を込めての行動だとわかったからだ。

B「せっかくのお披露目ショーなんだ。楽しまなきゃ損ってもんだろ?…2週目、フルで行く、記録を頼む」

S「了解」

管制室の上を通り過ぎた後、彼は手に持つ操縦桿とスロットを更に奥へと押し込んだ。

B「…っぐ!!」

一気に加速がつき、対G性能が備わっているパイロットスーツでもGを強く感じる。

B「…っつぅ…こ…んなに速いのか!」

出力は2500を超え、見えては消えていく景色が、先ほどよりも早く一瞬で見えなくなる。さすがに月面すれすれでの飛行は怖くなった。

S「それでもあまり動揺せず…か。さすがですね」

彼の身体状況を見たサトウが呟いた。もともとオリジナルのZガンダムよりも出力、推力ともに1.5倍ほどの性能を持つ「グレイ・ブルー」を操るには相当の技術が必要だ。それに加えて、パイロットの「度胸」も相当な物がなければできない。

B「っく!!なんとかいけそうだ…方位を118から139への許可を求む」

S「139…わざわざ難しいコースを選ぶんですか?」

B「せっかくの全力なんだ…自分の腕を信用してる。あえて山ぁ選んでみるのもいいだろ?」

S「…了解。方位118から139への変更を許可します。存分にGを味わってください」

B「っへ!言われなく…ても味わうさ!!」

心拍数が上がっているのが自分でもわかる。
正直な気持ちは身体に出てくる。
ヘルメットの中で少し汗をかいている。

緊張
恐怖
不安

どの感覚なのか?自分でもわからない。だがそれを落ち着ける信念が彼を更に前に前に進めていく。

モニターにはPull UPの文字がずっと表示されている。
過去多くのテストパイロットや歴戦の戦士達のデータをフィードバックされたOSの判断でも、彼「ブルー・イーグル」の飛ぶ高度は危険だということが証明されている。
それでも、この高度を再度保つように考えたのは、彼が自分自身の腕を信頼していること以上に、自分の限界を超えることを望んでいるからなのであろう。

これから出会うであろう敵は、きっと今の自分以上の腕を持っていると彼は考えていた。

B「方位、139へ変更…超えてみせる。今の自分を…な」

グレイ・ブルーは更にスピードを増し、眼前に広がるクレーター群に向かって飛び込むように進んでいった。

グレイ・ブルーが方位を変えた頃とほぼ同時刻。

フォンブラウンに駐留していたエゥーゴ第2艦隊所属のアイリッシュ級「アカギ」のハンガーでは3機のMSが発進準備を進めていた。

「え~~っと…うん…ん~~なるほどね」

MSのスペック表を見ていた長髪の男が、コックピット内部で独り言を呟いていた。

「ふむ…やっぱりピーキーだねぇ。まぁリックディアスに乗ってるよりマシかぁ」

「ちょっと~ジョエル!今の発言許せない!リックディアスを馬鹿にするなぁ?いい機体だぞこいつは~。何せMk=2よりも高性能だからね」

ジョエルのモニターにヘルメットをまだ付けていない短髪の女性が表示されている。

J「いあ、別にリックディアスをバカにはしてないよ。スティシーの機体はいい機体だしな」

S「フン!どうだか…それより早く準備しなよ。もうゲールは出てるんだから!」

ステイシーと呼ばれた女性パイロットは、そういい終えるとヘルメットを被り、通信を終えた。

J「ふぅ…さて残りをすませちまうか」

?「じょえる~~聞こえるかにゃ?」

J「あん?シリウスか?聞こえる…けど。またカメラの位置がずれてるぞ?」

Si「ああ~~~またずれてるにゃ。人間視点になってるにゃ」

カメラの視点が下に下がると、ピンと上を向いた耳が見える。

J「まだ、もうちょい下」

Si「…どうかにゃ?」

声の主。シリウスの顔全体が見えた。耳とは正反対にちょっとくたびれた感じのひげが彼の疲労感を感じさせる。

既に長い付き合いのジョエルではまったく違和感はないが…

映像に映っているのは言葉を話す猫だった。

J「ん~~かわいい顔がよく見えるぞ~。てか何でまだメットを被ってないんだよ」

Si「かわいい言うにゃ!…メットは中でヒゲがめちゃめちゃになるから嫌なのにゃ」

彼というかオス猫のシリウス。

旧ジオン軍のフラナガン機関で作られた彼は、機関の中で、脳の色々いじられたらしい。

それにより、本来の猫よりも高度な脳器官を持ち、本来ではありえないはずの言語能力まで身に着けた。

彼の脳は「リフレッシュ」という名の記憶、知識を強制的に植えつけさせられる実験を幾度も行われた結果。人間以上の知識をもった猫となった。

フラナガン機関の詳しい資料が、機関が消滅したと同時に消えてしまったため、そこまでしかわからなかったため、一体何故このようなことが行われたのかはまったく不明だ。

彼、シリウスは一年戦争時、旧ジオン公告第6MS大隊所属、第9艦隊所属の「シリウス」隊に配備され、一年戦争最後の戦闘である「ア・バオア・クー」で、その膨大な知識を使い、シリウス隊を含む第9艦隊の被害を最小限に抑えた功労者である。

空間把握能力に長け、戦術知識はそんじょそこいらにいる連邦の高官などが束になっても相手にならないほどだった。

実際、第9艦隊はNフィールドの激戦の最中、数で圧倒的な戦力差の中、全ジオン艦隊の中で一番被害が少なかったのである。

その彼も終戦後は、普通の猫としての生活には戻れるはずもなく、共に脱出したシリウス隊の隊長の家で生活を送っていたが、再び戦争が始まり、シリウス隊隊長も戦場に出ることを決意。彼もまたエゥーゴの所属となった。そして現在に至る。

J「てか今でもぐちゃぐちゃじゃないか」

Si「これは疲れでこうなってるだけにゃ!!」

S「あーーーーーーーー!!もうそんなくだらない会話はいいからさ!お客さんはどうなってんのさ!」

Si「…人間の女はすぐ怒るにゃ…カルシウム不足と精神的に不安定が見られるにゃ。一度カウンセリングを…」

S「んなこたぁどうでもいいんだよ!!早く説明しろ!このバカ猫がぁ!」

Si「ひぃ!!」

シリウスのピンと張った耳がしゅんと倒れ、世間一般にいう「従属」の態度を取る。こういう部分はやはり猫なんだなぁとジョエルは思った。

Si「お客さんは既に月を2週目に突入したにゃ。3週目に入るのは…およそ17分後になると思うにゃ。」

S「…で?」

Si「…で…ステイシー達とぶつかるのは3週目の中間地点から2分いったくらいになるにゃ」

S「およそねぇ…いったくらいねぇ…」

Si「僕の計算ではそうなるにゃ!!マザーもそう判断してるにゃ!!」

S「ふぅん…まぁいいわ。ジョエル早くしな!時間ないんだから!」

今まで会話を黙って聞いていたジョエルはチューブ飯を食していた。

J「ん!…ああ~わかったよハイハイハイハイ!」

S「ハイは一度でいい!!」

J「ハイ!わかりました!!」

S「ったく…ステイシー・ウェゼインバーグ、リックディアスSC。出るよ!」

ジョエルの反対のカタパルトから白く塗装されたリックディアスが漆黒の宇宙空間に向かい、発進していった。

Si「…彼女は苦手にゃ…なんでいつも怒ってるのかにゃ?」

J「まぁ人間の女っていうのは複雑な生命体なんだよ」

Si「!」

Si「発情期なんじゃ…」

S「帰ったら覚えてろよ…」

ステイシーとの通信を切っていたつもりだったシリウスは、さらに耳がたれて泣きそうな顔になっていた。

よほど「帰った後」のことが怖いのだろう…本能にまで染み込んだ恐怖が彼の体全身から感じる。

J「…あとで謝りにいこうな…」

Si「…うん」

ジョエルがモニターの周囲を見ると、整備クルーも下がり、カタパルトへの移動指示が出ていた。

J「ふぅ…じゃあちゃっちゃと終わらせてくるか」

Si「そうもいかない相手だと思うにゃ」

いつの間にか恐怖の感情が消えていたシリウスからの返答にジョエルは疑問に思った。

J「?何で?」

Si「ただのスポンサー様じゃないってことにゃ。エゥーゴのほとんどの作戦に参加、しかもどこも激戦区だった場所から自分の隊をほとんど全員生還させてる指揮官にゃ」

J「ほぉ…だが指揮だけではな…」

Si「まぁ後はジョエルがどう感じるかだにゃ。準備OKにゃ?」

J「おう!出してくれ」

Si「前方視界、コース、共にクリア。カウント10秒前」

J「…」

ジョエルはモニターの前面、「アカギ」のカタパルトから見える宇宙空間を見ていた。

月の白い大地、宇宙の闇、その先に先行して発進したステイシーとゲールの機体が左右に別れ、旋回している。バーニアの光が、周囲の星々と同じようにチラチラ光っていて、神秘的にも思えてしまった。

Si「カウント5」

4

3

2

1

J「ジョエル・C・ハンター。百式、出る!!」

白と黒に塗装された百式が、カタパルトから射出され、月の白い大地の中へと吸い込まれるように消えていった。

J「さて、お客さんを向かえにいくぞ!ゲールは右翼、ステイシーは左翼につけ!フォーメーションはC3。場合によってはA3でいくぞ」

G「…了解」

S「了解」

J「楽しんで行こうぜ!」


一つの時間の中に、様々なことが起こっていることをブルーはもちろん知らずにいた。
この宇宙(そら)での出会いが彼に大きな影響を与えることなど…

この時は誰も知る者はいなかった。

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